アンジョひとりだけじゃ、だめなんです | ■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2015日記

アンジョひとりだけじゃ、だめなんです

上原アンジョの華は、一幕にあるね。



今日のマチネ、「♪ いま世界の色は変わる 日ごと塗り替えされている」という歌声が響き渡ったとき、客席の空気もさーっと上原アンジョ色に塗り替わったのが、手に取るように感じられた。いや、このときからじゃなく、「パリ・十年後」でマリウスとともにひらりと登場するシーンから、そう。見た目にも歌にも瞳の輝きにも人をひきつけるカリスマ性があるから、ワンデイモアまでのシーンをひとりでぐいぐい引っ張っていく。



だけど2幕、バリケードが落ちる場面が全体的に物足りなかったのが残念。泣けなかった。上原アンジョの転げ落ち方がちょっと不自然だったり、グランテールとの絆があまり描かれていなかったりと、思い当たる理由はいくつかあるんだけど、決定的な原因は、そういう細かいことじゃないような気がする。



思うに、上原アンジョと他の学生たちとのエネルギーのバランスの問題なんじゃないだろうか。上原アンジョは「♪ 過ぎた日に乾杯」以降は、迷いの表情が多くなって、一幕のような華々しさは影をひそめる。それと対になるほどの熱情が仲間からもっと感じられたら、アンジョの憂いとの落差がくっきり浮かび上がってきて、バリケードの最期がさらにドラマチックになるんじゃないかな。


学生ひとりひとりは、細かい作りこみもあるし(今日の「恵みの雨」で、エポの血を手にとって肩を落とすジョリと、彼をなぐさめるフイイ(?)はよかった!)、歌のレベルも例年以上だし、いいお芝居していると思うの。だけど、リーダーであるアンジョへの思慕や、仲間と運命を共にする決意が燃え上がっている様子が一幕の「ABCカフェ」シーン以上にないと、二幕では上原アンジョの心境に引っ張られてバリケード全体に勢いがなくなってしまう気がする。



アンジョひとりに華があってもだめなんです。学生たちみんなが、革命の熱を常に絡み合わせていないと、泣けないんです。