静のパワー秘めた岡アンジョ | ■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2015日記

静のパワー秘めた岡アンジョ

2007年に岡アンジョを観たときは「天使だ」と思ったけど
、4年後に再び舞台で目撃したのは、強いパワーを静かに放つ、ちょっと違う岡アンジョだった。

変化に気づいたのは「♪殺せ肥えた豚どもを 築け今バリケード」を耳にしたとき。前回までの岡アンジョにあったまぶしさが、正直感じられない。若さに任せた、怖れを知らない正義感がない。向こう見ずな勢いなくしてアンジョルラスが務まるのだろうか?不安が胸をよぎった。

だけど、今回の岡アンジョの本領発揮はこの後から始まる。ラマルク将軍の死の報に力を落とす仲間に「♪この死を無駄にしてはならない さあ立ち上がろう」と呼び掛ける歌が響いたとき、客席にいる自分の身にも、ぶるりと寒気が走った。ゾッとしたのではない。アンジョの声で迷いが断ち切られ、目が覚めた感じ。「♪葬儀の日その名讃えて」で岡アンジョは、クールフェラックの腕を取って立ち上がらせてたんだけど、そのときのクールフェラックも同様に、ハッと目覚めた表情をしていた。



岡アンジョは決してわざとらしい身振り手振りで仲間をいざなってるわけじゃない。相手をまっすぐ見つめて信念を歌いかけているだけ。その静かなパワーが生む化学反応が周りの学生たちに広がり、舞台のボルテージがぐんぐん上がっていく様子の、なんと圧倒的なこと!「♪今こそ歓びの声で迎えよう」から「♪市民は立つ!声を聴いて群れとなりて!」にかけて、客席にいながら興奮の震えが止まらなかった。ここでこんな反応が自分の中に生まれたの、初めて。

若さゆえの盲目的な勢いはない。だけど、信念を静かに伝えて仲間と観客の心をとらえてしまうのが、今年の岡アンジョ。こんなアンジョルラス、ありなんだ!想像だにしなかった新しいアンジョ像に今年、出会ってしまった。

こんなことを期待してスペシャルキャスト版を見に行ったわけじゃないのに、どうしてくれよう。帝劇を出て今までずっと、心が乱れっ放しだ。