カリスマの引力と、優男の破壊力 | ■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2015日記

カリスマの引力と、優男の破壊力

昨夜のABCカフェ、上原アンジョと原田マリウスが放つ、それぞれ種類の違う力にひきつけられた。

上原アンジョが、強い光を宿した瞳で歌う「♪葬儀の日その名称えて」は、ラマルクの死を聞いて沈み込む学生たちに、再び命を吹き込む。すぐそばでリーダーの呼びかけに反応したフイイとクールフェラックの表情がたちまち輝きを取り戻す様子は、まるでアンジョルラスという名の魔法にかけられたかのよう。ああ、そういう魔法の持ち主を、カリスマと呼ぶんだろうな。低く強い美声、恐れを知らない眼差し、美しく伸びる立ち姿。天が与えた才を惜しみなく差し出して、舞台上の学生たちを、劇場内の観客たちを引き込む力の前に、新演出がどうこうというなんていう考えはかすんでしまう。旧だろうが新だろうが、上原アンジョの特別さが揺るぐことはない。

そんなリーダーと志をともにする学生たちの中でも、原田マリウスだけは、場の空気をぶち壊す力を持っている。「♪君が今夜居合わせたら~」と必死に訴えるわりには、どこまでも優しく甘すぎる声の響きが、カフェの張りつめた雰囲気をどんだけ破壊してくれているか・・・。ふふふ。それを背中で聞くアンジョの後ろ姿に、「がっくし」と書いてあるのが、目に見えるようだったわ。

でも、それが真っ当なあり方だと思える。遠くの理想を追う革命と、今ここで芽生えた幸せ。ふたりがそれぞれ大事にしたいこと。同じ場に存在する異なる想いを、くっきりとみせてくれたふたりが、何だか新鮮だった。