生の人間くささ出した川口ジャベ | ■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2015日記

生の人間くささ出した川口ジャベ

きょう5/3本公演初日のMY MVPは、川口ジャベ。「自殺」では拍手を贈らずにいられなかった。プレビューですでに3回観たけれど、きょう初めて、彼の良さが腑に落ちた。

これまで私が観てきたジャベールの多くに共通する印象が「端正さ」ならば、川口ジャベの印象は「生々しさ」。直近でいえば2007-2009出演の阿部ジャベに近いかもしれない。でもいままでの若いジャベールには見られなかった「人間くささ」を、ベテラン役者の川口ジャベはきょうの「自殺」で見せてくれた。

「♪あいつはどんな悪魔だ」にはじまる独白のくだり、もっとも胸を打たれたのは「♪疑いを知らぬ 俺がなぜ迷う?」の一節。特別な歌い方やアクションをしたわけではないけど、56歳(原作の設定)の警部である川口ジャベールが己に、そして頭上の星たちに問いかける姿は、無防備なまでに素のままだった。法の鎧で身を固め、出自のコンプレックスを克服しようとしてきた男の、裸の心が表れた歌唱。プライドも地位ももはやなく「♪心震えるのだ 俺の世界消え失せた」と綴る言葉が、こんなにも情けなく泥くさく響いたことは、はじめてだった。

これまで観てきたジャベールが持つ、格好よさや貫禄からは、遠い。佇まいの美しさとも、無縁だ。それでも、人生半ばをとうにすぎた大の男の、やわらかでもろい精神をむき出しで見せてくれた川口ジャベに、今日はどうしてもひかれた。