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わからんぞ

新演出のここが、わからんぞ

●「♪わずかなパンだが分け合いましょう」って司教さま言うけど、テーブルにパンがない。バルジャン、パンじゃなくてスープみたいなのをスプーンですくって食べてる。

●「♪お入り船長さん~」で、船長さんがいないような? 新演出は全体的にリアリティを重視しているのに、ここで船長さんの存在を無視するのは、よくわからない。旧演出では確か、ブリジョン役の人が船長さんとして、ファンテ近くを通りかかっていたよね。

●「よくやってくれました」は、誰が言っているの?



生の人間くささ出した川口ジャベ

きょう5/3本公演初日のMY MVPは、川口ジャベ。「自殺」では拍手を贈らずにいられなかった。プレビューですでに3回観たけれど、きょう初めて、彼の良さが腑に落ちた。

これまで私が観てきたジャベールの多くに共通する印象が「端正さ」ならば、川口ジャベの印象は「生々しさ」。直近でいえば2007-2009出演の阿部ジャベに近いかもしれない。でもいままでの若いジャベールには見られなかった「人間くささ」を、ベテラン役者の川口ジャベはきょうの「自殺」で見せてくれた。

「♪あいつはどんな悪魔だ」にはじまる独白のくだり、もっとも胸を打たれたのは「♪疑いを知らぬ 俺がなぜ迷う?」の一節。特別な歌い方やアクションをしたわけではないけど、56歳(原作の設定)の警部である川口ジャベールが己に、そして頭上の星たちに問いかける姿は、無防備なまでに素のままだった。法の鎧で身を固め、出自のコンプレックスを克服しようとしてきた男の、裸の心が表れた歌唱。プライドも地位ももはやなく「♪心震えるのだ 俺の世界消え失せた」と綴る言葉が、こんなにも情けなく泥くさく響いたことは、はじめてだった。

これまで観てきたジャベールが持つ、格好よさや貫禄からは、遠い。佇まいの美しさとも、無縁だ。それでも、人生半ばをとうにすぎた大の男の、やわらかでもろい精神をむき出しで見せてくれた川口ジャベに、今日はどうしてもひかれた。

初日が開くよ

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いろいろあるけど、
初日が開くよ。

カリスマの引力と、優男の破壊力

昨夜のABCカフェ、上原アンジョと原田マリウスが放つ、それぞれ種類の違う力にひきつけられた。

上原アンジョが、強い光を宿した瞳で歌う「♪葬儀の日その名称えて」は、ラマルクの死を聞いて沈み込む学生たちに、再び命を吹き込む。すぐそばでリーダーの呼びかけに反応したフイイとクールフェラックの表情がたちまち輝きを取り戻す様子は、まるでアンジョルラスという名の魔法にかけられたかのよう。ああ、そういう魔法の持ち主を、カリスマと呼ぶんだろうな。低く強い美声、恐れを知らない眼差し、美しく伸びる立ち姿。天が与えた才を惜しみなく差し出して、舞台上の学生たちを、劇場内の観客たちを引き込む力の前に、新演出がどうこうというなんていう考えはかすんでしまう。旧だろうが新だろうが、上原アンジョの特別さが揺るぐことはない。

そんなリーダーと志をともにする学生たちの中でも、原田マリウスだけは、場の空気をぶち壊す力を持っている。「♪君が今夜居合わせたら~」と必死に訴えるわりには、どこまでも優しく甘すぎる声の響きが、カフェの張りつめた雰囲気をどんだけ破壊してくれているか・・・。ふふふ。それを背中で聞くアンジョの後ろ姿に、「がっくし」と書いてあるのが、目に見えるようだったわ。

でも、それが真っ当なあり方だと思える。遠くの理想を追う革命と、今ここで芽生えた幸せ。ふたりがそれぞれ大事にしたいこと。同じ場に存在する異なる想いを、くっきりとみせてくれたふたりが、何だか新鮮だった。

キャスト確認しなきゃ

きのうの朝刊で見てびっくり!
公演中止のお知らせの新聞広告なんて、私がレミゼ見始めたこの10年で、たぶん初めて。
■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2013日記-公演中止


それを受けた今朝、半分冗談まじりで「まさかのキャスト変更ないか、念のためチェックしとこうか」と東宝サイトを見てみたら、なんと本当にキャスト変更が発表されていて、またびっくり。
http://www.tohostage.com/lesmiserables/cast_henkou6.html

プレビュー公演って、本来こんなものなのなのかな。それならば本来、チケット発売日に「キャストおよび公演日程変動の可能性」についてひとこと触れておくべきでは。

でも、今夜の原田マリウス&上原アンジョは、それはそれで期待してたりする。
繊細でひたむきなマリウスと、圧倒的な歌声でカリスマ性をまとうアンジョ。

あと2時間あまりで開演。

これから初めて観る人へのTIPS(記事ちょい足し済)

プレビューが開幕して何日か経つので、周知のことかもしれないけど、一応書いておきますと。

●パンフレット販売は、初日5/3から
プレビュー期間、すなわち今夜までは、パンフレット販売ないのです。
売店には、見た目がパンフレットっぽい「譜面集」(だったと思う、たぶん)がおいてありますが、間違わないようにご注意。

●向きが逆になっているシーンが多数
特定のキャストの特定の表情を決め打ちで見たい方は、要注意です。

たとえば
○「ファンティーヌの死」
 ファンテを看取るバルジャンの表情を見たかったら、旧演出版では40番台以降(舞台向かってうんと右側)の席をとっていた。
でも新演出では、ベッドの配置からして違う。

○「恵みの雨」
 ここではアンジョルラスの険しい表情を見つめるのが常なのですが、立ち位置が真逆になりました。

○「ジャべールの自殺」の前段、バルジャンとジャベールが相対しているシーン
ここでも、崩れ行くジャベールの表情をしっかりみるなら、以前は中央~舞台向かって左側の席がお約束でしたが、立ち位置が逆になりました。

ほかにも同様の場面はたくさんあります。新演出版を初めて見るならまずは中央寄りの席にして、シーンごとのお気に入りポジションを探ってみるといいかも。

●香盤も違っています
レミゼでは、バルジャンジャベールをのぞくすべてのキャストが、二つ以上の役を兼ねて演じることになっているのは、ファンなら承知のとおり。旧演出バージョンでいえば「グランテール役=バマタボワ役も演じる」、同様に「レーグル=司教」「クラクスー=ラブリィ・レイディのヒモ」「コンブフェール=工場長」などなど。どの場面で、どのキャストが、何役で登場するのかを「香盤」と呼んでいるわけですが、これも新演出では、旧演出と違っています。

改めてキャスト表を見てみると、よくわかります。いままで同キャストが演じていた「レーグル」と「司教」が別キャスト。「グランテール」と「バマタボア」も、「コンブフェール」と「工場長」も別キャスト。
旧香盤を前提に観てしまうと、違和感おぼえると思われるので、要注意です。
$■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2013日記-130502夜キャスト

新演出、ありでしょう。

日本での新演出を最初に目撃したくて、
今日(もう昨日だけど)、帝劇に行ったわけですが。

結論からいえば、新演出は「あり」と思います。

「わかりやすさ」を、デジタル映像と前後の文脈を説明する歌詞・台詞で、プラスしています。
同時に「人間の感情の生々しさ」を、アナログな演出の多用で、強調しています。
アナログな演出とは、例えば何度も出てくる生の灯火とか、陽の差し方が絶妙なライティングの技術とか。

結果、デジタル映像の増加とアナログ演出の多用で、「プラマイゼロ」と私は受け止めました。

細かいこというと「スターズの背景は新演出だと説明的すぎないかしら?」とか、
突っ込みたいところいろいろあるんだけれど、
総合的には新演出、「まったくなし」か「あり」かといわれれば、「あり」です。

古いファンの好みにとらわれず、新しいファン&一般層にわかりやすい演出をするという判断は、商業興行のひとつのありかたとして、私は支持します。クオリティ高くそれをかなえたデジタルな技術力&アナログな創造力は、素直にすごいと思います。

いま、その日が、来た!

今日の帝劇。新しい帝劇。新しいレ・ミゼラブルが始まった!
$■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2013日記-初日看板


$■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2013日記-帝劇入口
$■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2013日記-帝劇ロビー

次の更新は、次回公演の初日です

本来はレミゼ公演終了とともに更新をやめるこのブログてすが、千秋楽過ぎても書いておきたいことがあって、結局終演3日後の今日まで続けてしまいました。でもこれでおしまい。読みに来てくれた方、ありがとうございました。どんな闇夜もやがて朝がくるという歌を支えに、レミゼと再会する日を心待ちにして。
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アンサンブルさんの良いお仕事 2011ver.

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レミゼ公演時限定のこのブログ、最後の記事ではいつもアンサンブルさんのことを書きたくなります。

●水兵三人組が毎回楽しみだった
「♪女の匂いだぜ」から始まる三人の水兵、どのキャストも芸達者! 今期のマイベストアンサンブルシーンは、ここかも☆ 演じてたのはブリジョン、フイイ、ジョリだよね。田村ブリジョン水兵の「そよ風」にウケた話 は前にも書いたけど、ほかもみんな良かった。腰降って「♪港に錨をぶちこ」みまくるブリジョン水兵、「♪そよ風吹いてもおっ立つぜ」で仲間をなぜか触りまくるフイイ水兵、「♪おいらもやりてえ」と飛び上がっちゃうジョリ水兵。これくらい突き抜けてくれないと、レミゼじゃないよね~。計6人の水兵さんに、乾杯!

●鎌田フイイ、宿屋でのレトロなプレイボーイっぷり
テナルディエの宿屋シーンで客として登場するフイイ役者さんは、どうやらチャラいナンパ男な設定のよう。鎌田フイイがそこでしてた仕草がおもしろくて…。入口近くにたむろしてる女子たちに向かって、ある日は投げKissを、ある日は両手をピストルの形に組んで「君のハートを狙い撃ち」とばかりにズキューンと発砲する真似をしてた。やってることがレトロすぎて、吹き出してしまいそうなくらいツボ。

●あなたに泣かされましたよ、土屋グランテール
バリケード駆け上がって、赤旗と同じ色のバンダナを狂ったように振りまくる姿。脇腹を撃たれたとき、手を当てて身体をよじる痛々しいポーズ。倒れて力尽きる直前、赤いバンダナを握った手を最後まで掲げていようとする意思。バリケード陥落で涙の元栓開いたのは、あなたでした。

●田村ブリジョン、かっこいいよね
ソロ第一声「♪地獄だ 陽が焼けつく」、田村さんの声は囚人たちの壮絶さを描写する重さ。「パリ・十年後」の強盗団では革のベスト姿のブリジョンが、何げに色気あってかっこよかったな。バルジャンとコゼットを狙って、スラム街のガラクタ上部からくるりひらりヒタヒタと忍び寄るしなやかな身のこなしも、いい。

●エポニーヌに恋する藤田モンパルナス
以前の記事でもこのこと書いたけど 、千秋楽でまた目撃できてうれしかった。「♪その髪、好きだわ」とマリウスに甘い声でささやくエポニーヌをスラム街セットのてっぺんから見つめて、悔しげにこぶしを振り下ろすのね。恋する男子。

●「恵みの雨」のジョリーズ
ふたりのジョリ、お芝居ちょっとずつ違うけど、同じようにショック受けてる。土倉ジョリは、エポの息があるうちに、自分の傍らに落ちてるエポの血に気が付く。血をすくった指を膝にのせて固まった姿勢のまま、エポニーヌの最期をバリケードの上から見守っていた。大津ジョリは、エポが命からがらバリケードにやってきたとき、瀕死の状態であることがわからず、「大丈夫だ!」と自信持って仲間に伝えてしまうんだよね。そして自分のすぐそばを通ったエポが落としていった血の痕を、彼女が果てた後に見つける。指で血に触れて呆然とする大津ジョリのお芝居、エポの異変に気付けなかった後悔の色がにじみでていて、悲しげだったな。